透視図法による影の描き方(デジタル)
今日は透視図法で人物の影を描く方法について説明します。
アナログでもやってやれなくはないはずですが、非常に手間がかかるので、デジタルの変形機能を利用するという前提で説明させていただきます。使用するソフトはAdobe Photoshop CS6です。(古いバージョンでもできるはずです)
影を正確に描く最強のツールは3Dソフトなのですが、自分でデザインした人や服や小物の影を落とすとなると、モデリングとポージングが必要で、壮絶な手間がかかります。その点、今回紹介する方法は2次元の絵を追加で1枚描くだけで良いという比較的楽な方法です。
※今回使う絵の元絵は以下のエントリにあります。
今回は人物とパイプ椅子の影を背後の壁に描きます。想定するのは太陽光で人物の正面から真横方向に光が差し込むと仮定します。(朝日や夕陽を想定しています。本当は完全な真横にはならないと思いますが、説明の都合で真横からの光を使います。真横からなので、地面に影は落ちません)
赤で塗りつぶした位置に影が落ちますが、最初にする作業はこの位置(すなわち4点A、B、C、D)を求めることです。一応手順を示しますが、絵によって手順は変化するので、この例ではこうなる、程度のものだと思ってください。(緑の箱は、後述するシルエットと対応する範囲を指しています)
- 壁と地面が交差する位置に直線を引きます。
- 緑の箱の手前下辺を延長し、1で引いた直線との交点Aを求めます。
- 点AとVP3を直線で結びます。
- 緑の箱の手前上辺を延長し、3で引いた直線との交点Bを求めます。
- 交点BとVP2を直線で結びます。
- 緑の箱の奥上辺を延長し、5で引いた直線との交点Cを求めます。
- 交点CとVP3を直線で結び、1で引いた直線との交点Dを求めます。
次に必要となるのは、人物とパイプ椅子のシルエットです。このシルエットは必ず光源を視点としたものを描く必要があります。今回は人物の正面から光が差し込むと仮定していますので、正面から見た人物のシルエットでなければなりません。(斜め45°上方から光が降り注ぐ場合は、斜め45°上方から見た人と椅子を描く必要があります)
また太陽のように遠い光源の場合は、平行投影で描く必要があります。つまり遠くのものほど小さくなる法則を働かせてはいけません。すべて実寸の比率通りに描きます。
同じ人を2回描くことになるので手間はかかりますが、影の方はシルエットで良いため、顔のパーツや服のしわを描く必要がなく、普通に人を描くよりは楽だと思います。
これで準備は完了です。あとはPhotoshopの変形機能を使うだけです。まずは絵の上に新規レイヤーを作って、影のシルエットを貼り付けます。
次にメニューから「編集」-「変形」-「自由な形に」を選びます。すると、左図のような矩形の枠が表示されます。
枠の四隅をドラッグして、あらかじめ描いておいた影の投影位置(赤い四角形の四隅)に合わせます。
最後にENTERキーを押すか、画面上部にある○ボタンを押してください。
※緑の箱とシルエットの対応関係が完全に正確でなかったため、見た目で判断して矩形の位置を少しずらしました。
これで変形は完了です。あとは不透明度を調整すれば完成です。この例では不透明度を20%にしました。(乗算レイヤーを使う方法もあります)
影の一部がパイプ椅子にかかってしまったので、レイヤーマスク機能で当該部分の影は消してあります。この方法で描けるのは、壁に投影される分だけですので、別途パイプ椅子に落ちる影は自力で描かなければなりません。また人物のパーツ間で影が落ちる場合も、自力で描く必要があります。(腕の影が胴体に落ちる等)
手順としては以上になります。今回はソフトの使い方を主とした説明とさせていただきました。地面に影が落ちない例なので変な感じがしますが、本当はもっと自然な感じに見えます。見えるはずです……。
斜め上から光が差し込む場合は、壁と地面に影がまたがるので、より手順が複雑化します。変形はともかく、4点の求め方がなにげに難しいんですよね。
透視図法における影の考え方は、パースフリークスの陰影の章に載っていますので、そちらも参照してみてください。
以下のエントリに続きます。