球のパースについて

パースフリークスの方でいくつかご質問をいただきましたので、こちらで詳細を回答させていただきます。

Q1.球にパースはかかりますか?

透視図法では正対している平面でもない限りパースがかからないということはなく、よって球にもパースがかかります。 パースフリークスでは球のページで解説していますが、球の輪郭線は透視図上で

  1. 楕円
  2. 放物線
  3. 双曲線

のいずれかになります。これらの図形はいずれも円錐曲線と呼ばれるもので、円錐のどこかを切断したときに出来る断面の形状になります。

放物線や双曲線はちょっと分かり難いと思いますが、これらの曲線になるケースというのは画面に球全体が入りきらない場合に限られます。逆に言うと球の全体がすっぽり収まる場合は、円または楕円にしかなりません。

Q2.現実世界で球を見ると、(楕円には見えず)常に正円に見えませんか?

こういう疑問を持つことは重要です。多分答えはYESでしょう。なぜなら、現実世界で球を見るとき、球は視界の中心(付近)にいるはずなので。

人間の目というのは実は非常に視野が狭く、物体がくっきり見える範囲はわずか2°程度しかないと言われています。よってなにかをしっかり見ようとすると、必ず視界の中心に置かないといけないんですね。もちろん中心以外にあるものも見えますが、円とか楕円とかが分かるレベルではないと思います。

さらに言うと、脳の解釈としてはパースがかかった図形ではなく、もとの形状で把握しようとするので、円とか楕円とかではなく、球体は球体に見えると表現した方が適切かもしれません。机の上に長方形の紙を置いたとして、多分その紙はパース的には台形に見えてるはずですが、人間の脳は本来の形である長方形として認識してしまいます。なので肉眼で見てどう見える(感じる)かと、絵としてどう描くかは切り離して考えた方がいいかもしれません。

この質問の回答にはならないのですが、パースフリークスでは「画角」-「自然な画とは」の「透視図上における変形の解釈」というカラムで、球をなぜ円錐曲線として描くのかということについて説明しています。(言葉足らずな解説なので、異論が出るかもしれませんが)

Q3.相当な広角でない限りは、球の輪郭は正円で描いてしまって問題ないでしょうか?

これは私も描いてみないと分からない問題だったので、実際に作画してみました。(足線法で描いています)

球にかかるパース

 ご指摘いただいた通り、標準的な画角(60°以内程度)では、ほとんど正円という結果になりました。といっても、60°付近では扁平率は10%ぐらいはあるので、完全な円として描くより、気持ち楕円にした方が良さそうではあります。

 

 

 

 

 

画角に対する楕円の偏平率をまとめてみました。あくまでも今回描いた円の大きさに対するものなので、一般にこの値というわけではありませんが。

No. 扁平率 (%) 画角 (deg)
0 0.00 0.0
1 0.77 14.3
2 3.01  28.1
3 6.45  41.1
4 10.58  53.1
5 15.22  64.0
6 20.00  73.7
7 24.76  82.4
8 29.30  90.0

 

もう1点、別の方から影のパースに関するご質問をいただいていますので、また後日回答させていただきます。(8月5日)

さらに1件、8月26日にも頂いていたようです。ご質問いただいた量が多いですが、今月は多分時間が取れると思うので、ぼちぼち回答していきます。