Blenderとシルエットで描く人物の影 (3)

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昨日に引き続きBlenderで影を描く説明をしたいと思います。今日は以下の2つについて説明します。Blenderの操作説明が主になります。

  • 光源の設定
  • 光源を視点とするカメラの設定

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上図はOutlinerウィンドウ(デフォルトでは画面右上)です。シーンに配置されるオブジェクトの一覧がここに表示されます。今回使うのは、赤字で描かれているものだけです。

シルエットを使って影を描く場合、カメラは2台必要です。1つは絵の視点となるカメラ(Camera)、もう1つは光源を視点とするカメラ(Camera2)です。Cameraの設定は昨日行いましたので、今日はCamera2の設定を行います。

 

1.光源の設定

まずは光源の設定を行います。OutlinerウィンドウでLampを選択してください。(文字が白字のときが選択状態を表します)。続けてOutlinerウィンドウの下にあるプロパティウィンドウのヘッダーから光源のアイコン(下図参照)をクリックします。

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Lampパネルで光源の種別を選択します。デフォルトでは点光源(Point)になっていますが、今回は太陽光、すなわち平行光源(Sun)を使うことにします。

その下には光の色と強さの設定があります。デフォルトのままで良いので、そのままにします。Specularというのは俗に言うハイライトのことですが、3DCGではスペキュラ光と呼ばれます。これに対し、Diffuseは拡散光を指します。詳細はあとで説明します。

Shadowパネルでは(陰ではなく)影の設定を行います。No Shadowを選択すると、影が付かなくなります。デフォルトはRay Shadowであり、今回はこちらを使います。影の色を変更すると、黒以外の色付きの影を落とすこともできます。

影を落とす設定は物体側にもあり、影を落とす物体、落とされる物体の両方で影をONにしないと、影は描写されません。しかしデフォルトでは両方ONになっているので心配は要りません。

 

SpecularとDiffuseに関する補足です。下図を見てください。左がSpecularとDiffuseを両方ONにした状態であり、デフォルトはこの設定です。真ん中はSpecularをOFFにしたもの。さらに右はDiffuseもOFFにしたものです。

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つまり、Diffuseが陰影を付ける上での基本設定となり、Specularがハイライトの設定になります。同じ設定が物体側にもあり、光源と物体の両方でONにした場合のみ、ONになります。今回はデフォルトのまま(両方ON)でいきます。

 

次に光源の位置と回転角を設定します。設定画面を呼び出すには、3D Viewウィンドウにマウスカーソルを置いた状態でNキーを押します。

この設定は点光源と平行光源で異なります。点光源の場合は、位置のみが意味を持ち、回転角は無視されます。逆に平行光源の場合は、位置が無視され、回転角のみが意味を持ちます。(平行光源とは太陽光のような遠い光源を指し、位置を真面目に設定するならば無限大です。太陽だとしても150000000kmになります。このような巨大な値は扱いにくいので、位置設定は無視し、回転角のみで設定する仕様となっています)

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今回は平行光源を使うため、回転角のみを設定します。角度の概念は昨日説明したカメラの場合と同じであり、すべてを0°に設定すると真下を向きます。しかし真下の光は影を落とさないため、角度は必ず指定する必要があります。ここではXとZに共に60°を設定するものとします。カメラ側にも同じ設定を行うため、Yは極力0°になるよう設定してください。0°以外を設定するとカメラ上側が変な方向を向くので。(Locationは設定しても無意味なので無視してください)

新たに設定した光源を使って影を描くとこのようになります。影の落ちる向きは光源の回転角に依存しますので、向きを変えたいときは回転角を変更してください。(点光源の場合は位置に依存します)

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光源の設定は以上です。

2.立方体のマテリアル設定

次にカメラの設定を行いたいところですが、その前に立方体のマテリアル設定について説明しておきます。マテリアルとは材質と言う意味ですが、具体的には物体の色や反射光の強さなどを設定できます。物体表面に画像(テクスチャ)を貼り付けることもできますが、今回は行いません。

立方体のマテリアルを設定するには、事前にOutlinerウィンドウで立方体を選択しておく必要があります。(立方体がまだ作られていない場合は、3D ViewのツールシェルフでCreate - Cubeを選択します)

その後、プロパティウィンドウ(デフォルトではOutlinerウィンドウの下にあります)のマテリアルアイコンをクリックすると、以下の表示になります。

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初期状態ではマテリアルが未設定になっているため、+Newボタンを押して新規マテリアルを追加します。(ちなみに起動直後に配置されている立方体はマテリアル設定がされています)

右端にも+ボタンがありますが、こちらはマテリアルスロットの追加ボタンになります。マテリアルスロットとはマテリアルをセットするための入れ物であり、マテリアルの実体ではありません。順序としては、マテリアルスロットを作成 → マテリアルスロットを選択→ マテリアルを作成、となります。しかしスロットがない状態で新規マテリアル追加ボタンを押すと、自動的にスロットが作成されるので、スロット追加ボタンは押さなくても問題ありません。(2個以上のマテリアルを作る場合は、スロットの追加が必要です)

マテリアルを追加すると、以下の画面になります。

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上から順番に説明します。Surfaceは面を描く設定であり、デフォルトではこちらが選択されています。しかし今回はWireを選びます。これは辺を描く設定です。詳細はあとで説明します。

DiffuseとSpecularは光源のときに説明しましたが、拡散光とハイライトの設定になります。Diffuseの色が物体表面の色を指します。緑にすると、緑色の立方体が描かれます。Intensityは反射光の強さであり、デフォルトは0.8になっています。そのままでも良いのですが、今回は1を設定しました。またハイライトは必要ないため、0を設定しています。(0を設定するとハイライトは表示されません)

Shadingパネルは陰の設定です。Emitは放射光の強さであり、光源によらず物体を発光させたい場合に設定します。0.2が設定されていますが、デフォルトのままで構いません。(デフォルトは0であり発光しません)

Shadelessにチェックを入れると陰を描きません。このとき真っ黒になるわけではなく、Diffuseの色で塗りつぶされます。立体形状が分かりにくくなるので、今回は陰を描かせることにします。

Shadowパネルは影の設定です。デフォルトは上図の状態になっています。Receiveは影を落とされる側の設定であり、チェックを外すと他の物体による影が落ちなくなります。Castは影を落とす側の設定であり、チェックを外すとこの物体による影が落ちなくなります。Cast Onlyにチェックを入れると、物体を描きません。影だけを表示したいときに使います。(昨日の説明で使いました)

 

細かい部分を補足していきます。SurfaceWireの違いですが、下図の左がSurface、右がWireです。

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Shadelessにチェックを入れると次のようになります。陰が付かなくなり、Diffuse色で塗りつぶされます。

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Shadowパネルの設定の違いによるレンダリング結果は以下の通りです。右下のみ影を受ける側の物体のマテリアル設定になります。この場合、床面のマテリアル設定です。その他は影を落とす側、すなわち立方体のマテリアル設定になります。

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影の設定はもう1つあって、プロパティウィンドウのヘッダー左端にあるカメラのアイコンをクリックすると、Shadingパネルの中にShadowsという項目があります。このチェックを外すと、シーン内のすべての影が落ちなくなります。デフォルトではONになっているので影が落ちます。一括して影を消したいときに利用します。

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3.立方体のモディファイア設定

同じ大きさの立方体を複数積み上げたい場合、配列モディファイアという機能を使うと便利です。Outlinerウィンドウで立方体を選択した状態で、Propertyウィンドウのモディファイアアイコンをクリックします。ここでAdd Modifierをクリックすると、下図の画面が表示されます。

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Arrayをクリックすると、配列モディファイアが追加されます。画面は下図の状態になります。

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今回は立方体を3個積み上げるため、Countに3を設定します。この数は元の立方体も含みます。

さらに立方体を並べる方向と間隔を指定します。Constant Offsetにチェックを入れると、実寸指定で間隔を指定できます。例えば1m置きに物体を並べたい場合は、こちらを使用します。しかし今回は立方体を隙間なく並べたいので、その場合はRelative Offsetにチェックを入れます。こちらは物体の大きさを1とした単位で指定します。縦に積む場合は、X方向とY方向が0、そしてZ方向が1になります。

設定したモディファイアを削除したい場合は右上の×ボタンをクリックすれば良いのですが、一時的に無効にしたいこともあります。その場合はABCのアイコンをクリックします。意味は左記の通りです。

 

モディファイアの効果を確認してみましょう。下図の左が配列モディファイアなし。右がありです。データ上、立方体は1個しかありませんが、モディファイアの機能で3個に増殖しています。実際に立方体を3個作っても良いのですが、モディファイアを使った方が管理や編集が楽です。

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4.光源を視点とするカメラの設定

少し脇に逸れましたが、いよいよ本題であるカメラの設定を行います。

まずはカメラを追加する必要がありますが、最初に3D Viewウィンドウの説明をしておきます。起動直後に画面左側中央に大きく表示されるのが3D Viewウィンドウです。ここにはモデリングレンダリングの対象となる3次元空間が表示されます。

ウィンドウの種別は各ウィンドウの左上または左下に表示されるアイコンをクリックすれば変えることができます。この機能のおかげで画面レイアウトの自由度は高いのですが、初心者が混乱する元にもなっています。

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さて、3D Viewには左右の端に「ツールシェルフ」「プロパティシェルフ」と呼ばれる2つのウィンドウを表示させることができます。この表示は下図の通り上部左右端にある+アイコンをドラッグするか、キーボードのTまたはNキーを押します。あるいは左下にあるViewメニューを開いて、中のメニュー項目を選択しても構いません。

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下図が表示されたツールシェルフ(左端)とプロパティシェルフ(右端)になります。ここには重要な機能が詰まっていますので、頻繁に呼び出すことになります。

1つ注意があります。F12キーを押すとレンダリングができますが、レンダリング直後は3D Viewが勝手にUV / Image Editorウィンドウに切り替わってしまいます。そちらにもツールシェルフやプロパティシェルフはあるのですが、3D Viewに表示される内容とは違いますので気を付けてください。ウィンドウを3D Viewに戻すにはESCキーを押すか、左下のアイコンをクリックしてウィンドウ種別を切り替えます。f:id:reminica:20160227100537p:plain

カメラを追加するには、ツールシェルフ内のCreateタブをクリックし、一番下にあるCameraをクリックします。Add Primitiveの先頭の▼をクリックすると、その下の内容が折りたたまれ非表示になるので注意してください。何も表示されていないときは、もう1度三角をクリックすると表示されます。

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カメラを追加すると、アウトライナーウィンドウに表示されます。Cameraは初期状態からあるカメラで、Camera.001が新規に追加されたカメラです。文字の部分をダブルクリックすれば、名前の変更ができますので、分かりやすい名前にしておいてください。ここではCamera2という名前に変更するものとします。

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Camera2を選択状態にした上で、プロパティウィンドウのカメラ設定アイコンをクリックします。すると下図の画面が表示されます。

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設定には名前を付けることができますので、好きな名前を付けてください。特に困らないのであれば、デフォルトのままでも構いません。(説明していませんでしたが、マテリアルやモディファイアにも名前を付けることができます)

Lensパネルは重要です。ここで透視投影、平行投影、パノラマのいずれかを選択します。今回は光源として太陽光(平行光源)を使っているため、設定を合わせるため平行投影を選択する必要があります。点光源を使う場合は透視投影を選んでください。以降は平行光源であると仮定して話を進めます。

透視投影の場合は画角の設定が必要となりますが、平行投影には画角という概念がありません。(しいて言えば画角は0度です)。しかし代わりのパラメータがあります。Orthographic Scaleにはカメラが捉える範囲を指定します。Shiftは表示範囲のセンター位置を、Clippingには前方クリップ面と後方クリック面までの距離を設定します。

(クリップ面に関しては、パースフリークス―数学―3DCGの「視錐台」というセクションに詳しい解説があります)

下図の左はデフォルト設定、真ん中はOrthographic Scaleを12に変更したもの、右はShift Xに0.1を設定したものです。Scaleは大きくなるほど広範囲が映ります。Shiftはセンター位置をずらすだけで映る大きさは変わりません。

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今回はデフォルト設定のままでいきますが、状況によるので必要に応じてScaleやShiftを設定してください。 Clippingもデフォルトのままで大丈夫だと思いますが、表示が切れてしまう場合は、設定を変えてみてください。

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もう1つの重要な設定は位置と回転角です。この設定は3D Viewウィンドウの右端プロパティシェルフの一番上にあるTransformパネルです。ここは単純に光源と同じ設定を行います。太陽光(平行光源)の場合は回転角のみが意味を持ちますので、回転角の値を光源と同じに設定します。点光源の場合は、位置のみが意味を持ちますので、光源と同じ位置を設定し、回転角は物体が映る角度を好きに設定してください。

問題は平行光源における位置の設定です。真面目に解釈すれば無限の彼方にあるのですが、Blenderでは便宜上、物体の近くに配置します。これはすでに説明した表示領域のセンターやスケール、クリップ面の設定などが、位置の影響を受けるためです。

これに関しては具体的な数値を指示できませんので、立方体が映る位置を見つけて設定してください。回転角を変更してはいけないという制約があるのを忘れないでください。

 

次回に続きます

今日は光源を視点とするカメラの設定までです。このカメラを使って立方体をレンダリングしたものが、下の左図です。明日はこれを元に右図に示すシルエットを描きます。

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このシルエットは元のイラストを頼りに描くことになります。ここで箱が必要な理由がお分かりいただけるかと思います。箱がないと、あまりにも手がかりがなさ過ぎて描けないのです。詳細は明日!

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