デフォルメキャラの陰影描写 (2)
先月のエントリ「デフォルメキャラの陰影描写」では、キャラに鉛筆線で陰影をつけるという試みを行いましたが、前回はバストアップだったので、今回は全身にチャレンジしました。
鉛筆で陰影をつける場合、重要となるのはストロークの方向です。単に明暗をつけるだけであれば、どんな方向に鉛筆を滑らせても良いのですが、鉛筆線のタッチは上図に利用すれば、曲面を表現できるので、基本的には面の流れに沿うように鉛筆を走らせる方が良いです。
簡単に言えば、人体を輪切りにしたときの断面の輪っかをひたすら描いていくイメージです。このとき気を付けなければならないのは、パースに沿った線を引くということです。
今回の人物はアイレベルが非常に低い位置(推定15cm)にあります。 したがって、15cmよりも高い位置はすべてあおりっぽく見えています。
透視図では「奥に行くほどアイレベルに近づく」法則があり、あおりの場合は輪っかの手前の部分より奥の方が下に来ます。そのことを意識しながら、輪を描いていきます。
アイレベルを跨ぐと輪の向きが変わることに注意してください。
あおりで一番の難関はやはり顎ですね。普通の視点だとあごを描く機会は少ないので、いざ描こうとすると結構悩みます。この絵もあごと首の接合部の描写がちょっと怪しいですね。
人体を囲う箱(一辺が30cmの立方体)を描くと、このようになります。輪を描くときは、箱の形を参考にすると簡単です。
ところで、背景の絵は前回までのエントリで使用していたものですが、アイレベル(青い線)は目の位置(地面から150cm)という設定でした。
ところが今回のキャラはアイレベルが地面から15cmという前提で描いています。
もし前回の背景にこのキャラを乗せようとすれば、このように宙に浮かせるしかありません。現実には人が宙に浮くはずはないので、台に載せるなり、地面に段差を作るなりしなければならないということです。
以前も説明しましたが、この背景において、このキャラがパース的にジャストフィットするのは、唯一この位置しかありません。
これ以外のどこに置いても、おかしな絵に見えます。ちょっと試してみましょう。
どうでしょうか?
右のキャラは背景になじんでいますが、左は何かおかしいと思いませんか? 足が地についておらず、体がのけ反っているように見えます。
「背景と人体のパースが合っていない」と言うのは、このような状態を指します。
自分で描いたキャラに拾ってきた背景を重ねると、なじまないことが往々にしてありますが、多くの場合はパースが合っていないのが原因です。
背景とキャラの合わせは、結構難しい問題ですので、次回以降のエントリで問題の傾向と対策を考えたいと思います。