構図による見え方の違い

これまでパースに関する様々な記事を投稿してきましたが、中途半端な説明で終わったものが多数あります。(3点透視とか人体パースとか前景と背景の合わせとか)。そのあたりもいずれは綺麗にまとめたいと思っていますが、作画の手間が半端ないので、しばらくは絵を描き貯めつつ充電していきたいと思います。

 

その間に背景の作例を増やしていきたいと思いますが、今日は多くの絵師が畏怖するとされる教室を取り上げたいと思います。下図は一般的?な教室の透視図です。教壇側から見た構図で、後列の机と後ろ扉が見えています。

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今日はまだ机の細部の作画には入らず、全体的な構図を検討する部分をやります。上図はシンプルな1点透視図ですが、俯瞰気味の絵を目指したいため、アイレベルを220cmと高めの設定にしています。このとき問題になるのは画角です。図中に60°の視円錐が描かれていますが、その中に入る机はわずかです。また視円錐の外側は歪みがひどいです。右手前の机など、どうみても横長の直方体には見えません。

ところで、この絵のカメラの位置はどこにあるか分かるでしょうか? 答えは奥の壁から7m手前です。アイレベルとカメラ位置には下図の関係があり、距離点が判明していれば、比例計算で出せます。(例によってパースフリークスで解説しています)

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 ここで平面図と側面図を出します。

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観測者(カメラ)は行儀が悪いですが、最前列の机の上に直立しています。アイレベルは本来の目の高さ150cm+机の高さ70cmで、合計220cmとなっています。この人が画角60°(図中の赤い範囲)で前方を見据えたとすると、図の通り後部2列の机のみが見えます。

観測者の立ち位置が分かると、いろいろと楽しいことがあります。1つは画面を広げたときに、どこまで見えるかが分かることです。透視図は歪みを無視すれば画面を無限に広げることができますが、どんなに広げても、観測者の後方は見えません。この例ではなにをどう頑張っても教壇は見えないということです。

見えないものを見えるようにする方法の1つとして、立ち位置を変える手があります。例えば、観測者をさらに7m下げるとこのようになります。

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ここまで下げれば教室全体を見渡すことができます。もっとも、このような視点は絵だからこそ許される技であって、現実世界でカメラを持って学校まで出かけても、教室の壁が撮影を邪魔します。よってこの視点は写真トレースでは絶対に実現できません。(模型を作るか映画みたいに撮影用のセットを用意しない限りは)

 

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距離14mのときの透視図はこのようになります。相当な望遠になりましたね。ちょっと拡大してみましょう。

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 望遠(左)と広角(右)

左が14m、右が7mです。見た目が全然違いますね。どちらを選ぶかは、絵描きの好み次第です。あるいは何を表現したいかによります。

 

今日のところは広角と望遠の違いだけですが、次回はカメラを下や左右に傾けた場合の見た目の違いを説明するつもりです。また最終的には人物も立てて1枚絵として完成させる予定でいます。(作例を1つでも増やしたいので)