俯瞰三点透視の全身絵
前回は煽りの絵を描きましたので、今回は俯瞰を描きたいと思います。(念のため書いておきますが、俯瞰(ふかん)=見下ろす、煽り(あおり)=見上げる、です)
前回は顔だけでしたが、今回は全身を描きました。計算ミスで紙の大きさが不足したので、上下が切れていますが、説明に支障はないかと。
さて、この絵は三点透視で描かれています。(前回の絵は煽りと言いながらも、二点透視図でした)。よく見ると、頭より足元の方が小さくなっているのが確認できます。(頭を100とすると、足は80ぐらいの大きさなので、それほど強いパースではないですが)
そもそもなぜ全身にしたかというと、俯瞰の直立全身絵を過去に1度も描いたことがなかったからです。もう1つの理由は、顔単体にパースを掛けることが何気に難しいことに気が付いたからです。
そもそも「パースがかかる」とはなんぞやということを今一度確認してみましょう。
パースは英語のperspectiveを由来とする言葉であり、私は透視図法という意味合いで使っていますが、広義には遠近法という意味を持っています。
遠近法というのは文字通り遠近感を出す技法という意味ですが、遠近感を出す最も一般的な方法は「遠くのものほど小さく映る」という法則に則ることです。(遠くのものほど薄く描く空気遠近法というものもあります)
つまり「 パースがかかる」という表現は、遠くのものほど小さく描かれていることを意味していると考えられます。
では、遠くのものを小さく描くとは具体的にどういうことでしょうか? 箱で説明しましょう。
上の2つの図を見てください。いずれも立方体を8個並べたものです。左は軸測投影図(またはアイソメ図)と言って、遠近感のない図法です。8個の箱はいずれも同じ大きさで描かれていることが確認できます。そして右は透視図です。箱の大きさは奥にいくほど小さくなっています。
つまり左はパースが掛かっておらず、右は掛かっているということです。箱の場合は見分けるのが簡単ですが、人物の場合はよく観察しないと分からないことが多いです。
2つの絵はいずれも人を真横から見たものですが、左はパースがかかっておらず、右はかかっています。
平行投影というのは、非常に遠くから見たときの見え方だと思ってください。特徴的なのは、靴下やシャツの裾が直線で描かれていることです。
いずれにしても、パッと見では分かりにくいかもしれません。より分かりやすくするには、人間の体を箱に収めることです。
箱に入った人物の場合、箱の形状からパースの有無を判別できます。先のように箱の大きさで見分ける方法もありますが、それぞれの箱の向かい合う辺が平行かどうかで判断する方が確実です。
つまり辺が平行であれば、パースは掛かっておらず、平行でなければ掛かっています。より平たく言えば、奥に行くほど狭くなっていれば、パースは掛かっていると判断できます。
この例では、画面下に行くほど箱の幅が狭くなっていますので、パースは掛かっています。
冒頭の話に戻りますが、顔単体でパースが掛かるとはどういうことかと言うと、顔を囲う箱単体を眺めたとき、奥に行くほど狭くなる現象をはっきりと確認できるかどうかという意味になります。
この絵もパースが掛かっていることには違いないのですが、顔という局所的な空間のみを切り出すと、パースを感じ取れるほどの強い掛かり方はしていません。
つまり顔にかかるパースを論じるのであれば、もっとカメラを近づけて、顔を接写しなければならないということです。
そういう意味では前回の例もいまいちでした。ただ現実問題として、顔にそこまで強いパースをかけることは稀です。なぜなら、見た目があまり良くならないからです。
なので、顔にかかるパースはあくまでも、周囲のパースと合わせるという意味で考えた方が良いと思います。
※今回の絵の角度パラメータ:左50°右40°俯角36°俯瞰三点透視
というか俯瞰の絵の説明が何もできてないですね。いや、描くのは大変でしたよ。体のバランスが取り難いったらもうね。俯角が大きくなると顔と首の接合部が見えなくなるので、顔が肩に埋もれるような描写になります。このときの顔と肩の位置関係を正確に描き切るには、かなりの慣れが必要だと思いました。(見えない部分も描くのがポイントですが、それでもなお分かり難いです)
体のバランスは(箱という強力なガイドがあっても)かなり取り難いです。全身を描く場合は、足の接地面を先に描いた方がいいかもです。足の位置を決めてから、人体を下から上に組み上げていくわけです。慣れるとその方が描き易いかも。
俯瞰三点透視だと、異常に足を小さく描きがちですが、通常のカメラ視点だとそこまで小さくなることは稀です。俯角が60°以上ぐらいあって、顔のすぐ近くにカメラがあれば別ですけどね。
最後にもう1つだけ。オーバーラップの話をしておきます。箱に入った人を描く場合、人物の後ろに来るはずの線(この場合、破線)を手抜きして手前に描いてはいけないです。ご覧のとおり、人が箱に入っている感が恐ろしいほど出ません。この場合、レイヤーを3層構造にして
- 手前の線
- 人物
- 奥の線
の重ね合わせにすれば、綺麗に見えます。
物体が重なることで、前後関係を表現することをオーバーラップといいます。一見当たり前の技ですが、その当たり前をちゃんと行わないと、このようになるという例です。