メイキング後編:クリスマス絵(1点透視)

前編に続いて12月24日にアップしたクリスマス絵の制作過程をお届けします。今日はパースによる寸法出しの説明がメインです。

 

前回も描いた視円錐ですが、ラフの段階から少し変化しているので、再度描き直しました。画角は50°まで広がりましたが、十分許容圏内です。

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前回あまりきっちりと説明できていませんでしたが、1点透視図における対角消失点の位置は描き手が自由に決めることができます。画面から離せば離すほど望遠の絵になり、遠近感は付かなくなります。逆に対角消失点を画面に近づけると、絵は広角になり、限度を超えると絵が醜く歪みます。そのあたりを考慮しつつ、自分がどんな絵を描きたいのかを十分イメージして決める必要があります。

 

さて、今日は寸法の話をしたいと思います。パースのなにがすごいかというと、(手抜きさえしなければ)画面内に配置した物の寸法が正確無比に出せるということです。たとえば、このこたつのテーブルは75cm角となっています。(括弧内の数字は当初予定していた寸法です。パースを取りつつも、一部は目測で描いたので精度が出ていません)

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1点透視図ではアイレベルを物差し代わりに使うことができます。この絵のアイレベルは床から100cmとなっていますので、図に示す通りの長さを単純な比例計算で取ることができます。つまりテーブルは床から35cmの高さにあり、アイレベルまではさらに65cmの間隔が空いているということです。GLは今考えている奥行レベルでの床面の位置を指しています。無駄なようでも、この手の線をきっちり引いておかないと、今自分がどの奥行に対する線を引いているのかが分からなくなります。

 

次に部屋の奥行を調べましょう。今回、奥行は見た目で判断して適当に取りましたが、作図すれば後追いでも長さを測ることができます。

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この通り、対角消失点を使って三角形を描くと、二等辺三角形になるという有難い性質があります。図中のDP2は対角消失点ですが、同時に測点と呼ばれる特殊な消失点でもあり、(残りの2辺が条件を満たせば)この点に向かって描いた辺は二等辺三角形の底辺になるという性質があります。

二等辺三角形が描けると何が嬉しいかというと、部屋が奥行が分かります。どうやら、こたつの手前の辺から測って120cmのようです。この120という数字はアイレベルの100を元に出しています。高さ方向の100cmと横方向の120cmは単なる比例計算で出せます。加えて二等辺三角形を描けば、奥行方向の距離が出せるというからくりです。

しかし120cmですか……。思ったよりちょっと狭いですね。こたつの奥から測ると55cmということになります。これがもし10cmとかだと、人が入れなくなり、亜空間な絵になってしまうので注意が必要です。

 

最後は本棚です。テクニック的には同じやり方でいけます。

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 35cmの奥行にしたい場合、アイレベルを使って100:35の辺を取り、対角消失点を使って奥行方向の辺に変換します。

 

本棚の各段の棚についても説明しておきます。(意外と悩む箇所なので)

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図の1の線が引いてあるとき、3の位置を決める方法ですが、勘で引こうとすると意外と難しかったりするので、パースで概算の位置を求める方法を示します。

まず1の線と本棚の端との交点Aを求め、そこから視心に向かって補助線2を引きます。ここで本棚の奥の辺との交点をBとすると、Bから1と平行な線3を引けば良いです。ただし、これでは本棚の奥板の厚さが考慮されませんので、実際には点Bの位置を厚み分だけA寄りに取る必要があります。どうしても厳密さがほしい場合は、観念して二等辺三角形を描いてください。

 

パースの話はここまでです。以降は雪だるまの是非に関する議論を……。

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フィルタなし(左)とフィルタあり(右)

カレンダーの文字ですが、ご覧のとおりデジタルで描きました。ただ、普通に描くと周りが鉛筆線なだけに文字が浮いてしまうという問題があります。こんなときは、なんとかしてなじませるしかありません。鉛筆線の塗りつぶしパターンをスキャンして、それを文字の形でマスクする方法も思いつきましたが、今回はパスしてPhotoshopのフィルタで済ませました。といってもノイズを加えて不透明度をいじっただけですが……。

 

最後は扉です。

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これも本当はブラシで塗るべきなんですが、塗り始めるとあれもこれも全部塗らなければならなくなるので、やはりフィルタでごまかしました。こちらはノイズを加えたあと、水平方向の移動ぼかしを掛けています。(ペン入れしてないせいで、拡大すると線画が酷いですねTT)

 

今回はベタとフィルタだけでしたが、そのうちちゃんとした塗りの作品も公開できればと。