メイキング前編:クリスマス絵(1点透視)

今日は私が1枚の絵をどうやって「作っている」かを説明したいと思います。パースの取り方も併せて解説しますので、パースを勉強されている方も是非読んでみてください。

 

なんだか薄汚い絵が出てきましたが、これが今回の絵の出発点です。

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いわゆるラフというやつで、頭の中にあるおぼろげな像を紙の上に具現化します。この段階で絵の全体像は8割がた決まってしまうので、ある意味一番重要な工程です。

 

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まずはラフを元にパースの解決をします。なにやら大量に意味不明な記号が出てきましたが、これがパース理論というものです。一部だけ説明すると、PPというのが絵を描く領域です。今回は紙の上に描いていますので、PP=紙だと思ってください。なぜわざわざ紙の領域を図示するのかというと、パースを扱う際は紙の外にも補助線を引かなければならないからです。パソコンで作画すれば楽ですが、アナログ環境では場合によっては軽く死ねる作業量になります。(今回は1点透視図なのでそれほどでもないですが)

今回、最初に決めたのはアイレベルでした。いろいろ悩んだ末、左の子のお盆の高さ(床から100cmを想定)をアイレベルにしようと思いました。ただし、この絵は作画ミスで足が床に陥没していますので、赤い矢印で示す通り、体全体を上に引き上げる必要があります。(この修正は次の工程で行っています)

次にこたつのテーブルの奥行を決めます。今回は望遠気味で描いてみたかったので、図のようなかなり短縮したテーブルを描くことにしました。この絵は1点透視図なのでテーブルの奥行方向の辺は視心に向かって収束します。またこたつのテーブルは一般的に正方形なので、その対角線は対角消失点(45°消失点)に収束します。

 

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視心と対角消失点の位置が決まると、必然的にステーションポイント(SP)の位置や90°視円錐の大きさが確定します。この辺の理論は私が運営する超マニアックなパース講座サイト「パースフリークス」で解説していますので、興味のある方はそちらを参照してください。

 

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さて、SPの位置が分かれば画角を求めることができます。図のように視心を中心とし画面(PP)全体を含む最小の円を描き、SPから円の直径の両端に向かって補助線を引けば、そのときにできる角度が画角です。1点透視図の場合は対角消失点から画角を測る方が多分簡単です。この角度は普通に分度器で測るだけです。どうやら38°のようです。まあ標準レンズ的な視界と言えるでしょうか。もうちょっと画面を広げても大丈夫っぽいですね。

 

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ここで一旦ラフ画を進化させます。PPを少し横に広げました。先ほど説明した通り、左の人物の全体を上にスライドさせています。アイレベルは透視図上では水平線と一致しますが、透視図における水平線は単なる補助線ですので、室内だろうとなんだろうと引いておきます。

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この辺で、人物画を描き込むことにしました。まずは手堅く体のラインから取ります。今回は前景と背景をバラバラに描きましたが、絵によっては1枚の紙に両方を描き込むこともあります。ばらして描く場合は前景と背景の合わせが難しくなるので注意が必要です。この絵の場合、中央と右の子の腕の位置ですね。この位置がずれているとおかしな絵になるどころではなく、絵として成立しなくなります。

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前景と背景をPhotoshopで合成しました。腕の位置は問題なさそうです。

ここで人物の寸法について説明しておきます。左の子は直立で160cm、真ん中の子は膝立ちで120cm、右の子は座り(掘りごたつ)で90cmを想定しています。アイレベルは100cmですので、各寸法はそれを元に算出する必要があります。たとえば160cmの場合、アイレベルより下が100cm、上が60cmの配分となるよう10:6の比で分けなければならないということです。

 

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服を着せます。なにげに服のデザインはいつも悩みます。今回はクリスマスなので一人はサンタ服を、あとの2人は冬物のラフ目な格好にしました。

さらに小物類の描き込みも行いました。今回は徹底的にバラで描きましたが、いつもこんなやり方をしているわけではありません。

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長くなりますので、続きは後編でやります。本棚の奥行の求め方などもやりますのでお楽しみに。