パースのなにが難しいか

パースは数学です。なので数学が苦手な人ほど難しく感じます。
と言ってしまうと身も蓋もないので、パースが絵描きを苦しめる原因を探ってみましょう。

1.消失点が遠い

画角やら寸法出しの話になると、パースはとたんに難しくなりますが、
適当な消失点を1~3個取って、直方体を描くだけであれば、それほどでもありません。

しかし、その場合でも1つ厄介な問題が発生します。
「遠い位置に発生する消失点をどうするか」です。

次の絵は3点透視で描かれています。
(原画はパースフリークスの3点透視の章にあります)

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消失点は左上(VP1)、右上(VP2)、下(VP3)にそれぞれあります。

VP1に関しては画面内にあることが確認できますが、VP2とVP3はかなり遠い位置にあります。下図は、3つの消失点を含む全体図です。赤い枠(PP)が上の画像に相当します。

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私はこの絵を描く際、ラフ画をスキャナで読み込んだあと、Illustratorで上図のような補助線を引きました。それをプリントアウトし、トレーシングペーパーで転写した上で、細部の描き込みを行っています。

アナログ環境でもやってやれなくはないかもしれませんが、広大な作業スペースを必要とします。幾何学が得意であれば、電卓をたたいて補助線の両端の座標を求めることもできますが、(精神的に)かなり疲れる方法です。

 

正直に言うと、現時点でこの問題を解決する方法をご紹介することができません。良い方法が思いつかないからです。しいて言えば、Illustratorを使うことです。ソフトで作画する場合、なにが楽かというと線のコピーができることです。つまりVP1を始点とした線の場合、最初の1本は正攻法で引きますが、2本目以降は1本目をコピー(CTRL-C)した上で同じ位置にペースト(SHIFT+CTRL+V)すれば、VP1を始点とした線が何本でも作れます。あとは終点のアンカーを移動させるだけで、ごく短時間で同一始点の線を大量に引くことができます。

 

そもそも、なぜ消失点が遠くなってしまうのでしょうか?

1つは水平方向の7°-83°という数字です。これを0°-90°にしてしまえば依然として俯瞰視点ですが二点透視図になります。これは主観ですが、三点透視図の作画は二点透視図の2~3倍は手間がかかります。わずか7°のために作画の手間を増やすのは得策ではないかもしれません。

しかし、それは作業効率だけを求めた結論です。実際のところ、この絵に関しては角度的にこだわりがあったわけではないですが、それでも絵描きがラフでこの構図が良い!と決めたものを、パース的に描きにくいからやめようというのは、あまりにも情けないです。

なお、遠い消失点は(妥協すれば)平行線で代用できる、ということを知っている人は知っていると思いますが、その解法こそが先に紹介した7°-83°を0°-90°に変更することに相当します。もし7°にこだわりがあるのであれば、平行線で代用してはいけません。平行線で描けば3点透視ではなく2点透視図になります。