3点透視のなにが難しいか (2)

絵を描く際に、いきなりパース線を引くことはお勧めできません。その理由については別のエントリで扱うとして、ここでは作画の手順を以下の通りと想定します。

  1. 頭の中に描きたいイメージを思い浮かべる。
  2. 紙面上にラフという形で、具現化する。
  3. ラフ画を元にパース線が推測できるレベルまで整形する。
  4. 消失点を取り、パース線を引く。
  5. パース線をガイドとして、絵全体を整形し直す。
  6. 細部を描き込む。

以降の手順はペン入れや着色等、アウトプットの形態によって様々です。本ブログのメインテーマであるパースは手順4ですが、問題はその前の手順2~3です。

以上の前置きを踏まえて、昨日のエントリ「3点透視のなにが難しいか」の続きを行います。

2.直感でラフが描きづらい

完成した絵を見るだけでは制作過程が想像しづらいものですが、(描き慣れた固定パターンを除けば)絵を一発描きできる人はなかなかいません。たとえプロであっても、ラフから入るのが普通です。文章も草稿の段階で手直しの余地が全くないケースはレアであり、通常は推敲をします。それと同じです。
3点透視の作画が難しい理由の一つに、ラフ画が簡単には描けないという点が挙げられます。具体例を挙げて説明しましょう。

f:id:reminica:20141208211905p:plain

俯瞰視点での机のラフです。フリーハンドで描くと線がガタガタになるので定規を使っていますが、あくまでもラフなためパースは取っていません。さて、これを元に消失点を決定するとどうなるでしょうか?

f:id:reminica:20141208232759p:plain

こんな感じになりました。机の絵は画面(PP)の内側に描かれています。まず最初に気が付く問題点は視心(VC)が画面の中に入っていないということです。視心は視界の中心であり、人の視野でいえば、目が向いている方向、つまり真正面を意味します。

またカメラでいえば、写真の中央が視心です。つまりこの絵は撮影した写真の下の方だけをトリミングしたものに相当します。なにがおかしいかというと、普段カメラで撮影する際に、そんな撮り方をするでしょうか? あとから写真の一部を切り取ることはあっても、撮影の段階で本命の被写体をフレームの端の方に追いやってしまうことはないはずです。この絵は歪みこそ発生させないものの、視野を有効活用しておらず、不自然な構図であるということです。

もちろん、どのように描こうが絵描きの勝手ではあります。分析の結果がどうあれ、視覚的に理想的な構図であると考えるのであれば、無理に修正する必要はありません。とはいえ、視界の中心は歪みが少なく、絵がもっとも綺麗に映る領域なのは厳然たる事実ですので、その貴重な部分を無為に切り捨てるのは勿体無い行為であることだけは留意してください。

 

もう1つの問題点は俯角です。作図の結果39°であることが判明しましたが、描き始めに想定していた角度(50~60°)よりも浅くなってしまいました。おそらく視心から外れていることが原因だと思いますが、俯角は見た目にかかわる重要なパラメータですので、修正したいと思います。

 

次回「3点透視のなにが難しいか (3)」ではこの絵の修正結果と寸法出しについて説明したいと思います。